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特別寄稿:本間大輔〔部活問題対策プロジェクト〕
※記事内容は寄稿者の見解であり、プロジェクト団体の方針・見解とは必ずしも一致するものではありません。

この連載では、複数回にわたってさまざまなデータや文献を参照しながら「日本の教員の多忙問題」が何によって生じているのか、その核心に迫ります。
そして、学校制度が抱える「多忙問題」に大きく影を落としている「部活動」のあり方や、「日本型学校教育」の是非について問い直します。

【前回の記事】
教員の多忙さと部活動の関係について (1/7) :日本の教員を取り巻く現状と学校制度の成り立ち① (本間大輔=文)

2.日本の教員を取り巻く現状と学校制度の成り立ち②

◆学校に寄せられる要求が増える――教員が抱える業務の肥大化

明治時代から大正時代に普及した学校制度は、次第に人々にとって当たり前のものとなり、『子どもたちに関わることは全て学校の業務範囲内である』という認識が広がりはじめ、ついには慣習として全国的に当然のものとなりました。
さらに、高度成長期を経て、学校に様々な対応が求められるようになってきました。
保護者の高学歴化や教員の権力失墜なども、学校への要求が増した要因と考えられています。

はじめは「教育者、聖職者のあるべき姿とは」という信念のもと、使命感をもった教員たちが良心で対応をしてきました。
当初は、学校には極わずかのことが求められ、対応するだけに過ぎなかったのかもしれません。
しかし、長い期間を経てそれが少しずつ肥大化し、前回の記事で紹介したグラフが示すように『日本の教員は世界一多忙』となってきたのです。

さらに、これには教育公務員独特の「横並び意識」も影響しました。「横並び意識」とは、例えば、ある教員が「となりのクラスが学級通信を出しているから、うちのクラスも出さなくては」と考えるようなことです。「他の教員がしている対応は、自分もやらなければいけない」といった意識が、業務の肥大化の一因となってきたのです。

このような流れの中で、世間からだけでなく、教育行政からも様々な要求がされてきました。
こうして学校が様々な要求に応えてくる中、その一部として、部活動も肥大化してきました。

◆戦後、1960年代から、学校で「部活動」が盛んになっていく

終戦後の混乱の中、社会体制の立て直しが優先され、部活動はしばらく低迷の時期を迎えました。

この間に、部活動の制度上の位置づけについて目まぐるしい変遷があったのですが、当時の文部省調査(1955年実施)によると、部活動への参加者は2~3割程度に留まっており、あまり盛んに実施されていたわけではなかったようです。

当初文部省は、部活動が過熱化して「教育活動」から逸脱してしまう事態を防ぐため、対外試合に規制をかけていました。
しかし、外部団体からの強い要請等によって、そうした規制は緩和されていきました。
こうして、制度上、部活動の「勝敗を競う過熱化」が可能となる背景が整ってきました。

戦後しばらくして、部活動は次第に、各学校において盛んになっていきました。

対外試合についての規制は1964年の東京オリンピック開催に向けてさらに緩和され、行政や国民の期待のもと、部活動が盛んに実施されるようになりました。

文部省は、教育的観点から対外試合の規制を維持しようと奮戦しましたが、世間や外部団体からの強い要請の中、不本意ながらも規制緩和せざるを得ない状況に追い込まれてしまいました。

その後、例えば1980年代以降には、部活動には校内暴力の鎮静化や非行防止などの役割が期待され、求められてきました。
部活動は、その他にも様々な教育的役割を期待され、それを担ってきたのです。(この経緯については、連載の第6回目に紹介します)。
学校内において部活動がこうした役割を背負ってきたのは、日本の学校が「子ども達の生活を丸ごと抱え込む」という風土をもっていたことに、大きく起因しているものです。

このような経緯で、日本には学校制度が浸透し、部活動も発展を遂げてきました。
学校が「子ども達の生活を丸ごと抱え込む」という一大システムとして築かれ、現状のような「日本型学校教育」制度が確立されたのです。

部活動も、こうした中で学校教育の一環として様々な役割を期待され、学校が抱え込み、徐々に肥大化していきました。
教育現場には、「当人の専門性に関わらず、部活動の指導は教員が担当する」という慣習があります。そのため、部活動の業務が肥大化すれば、教員の業務量は増加することになります。
このように、部活動の肥大化は、本務の肥大化と同時進行で「教員の多忙化」を大いに加速させてきたのです。

そして、この一連の経過の中、教員の多忙化に拍車をかけ、また致命的な打撃を与えることになったのは、「業務量の増加に伴って、適切に教員数の増員がなされてこなかった」という現実です。

次回からは、これまでの内容をふまえて、「日本型学校教育」が持つ正と負の両面について紹介します。

【参照】
・神谷拓(2015)『運動部活動の教育学入門』大修館書店
・苅谷剛彦(2008)『教育再生の迷走』筑摩書房
・山本正身(2014)『日本教育史:教育の「今」を歴史から考える』慶應義塾大学出版会
・柳治男(2005)『<学級>の歴史学』講談社

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