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特別寄稿:本間大輔〔部活問題対策プロジェクト〕
※記事内容は寄稿者の見解であり、プロジェクト団体の
方針・見解とは必ずしも一致するものではありません。

この連載では、さまざまなデータや文献を参照しながら「日本の教員の多忙問題」が何によって生じているのか、その核心に迫ります。
そして、学校制度が抱える「多忙問題」に大きく影を落としている「部活動」のあり方や、「日本型学校教育」の是非について問い直します。

この連載では、さまざまなデータや文献を参照しながら「日本の教員の多忙問題」が何によって生じているのか、その核心に迫ります。
そして、学校制度が抱える「多忙問題」に大きく影を落としている「部活動」のあり方や、「日本型学校教育」の是非について問い直します。

これまで2回の連載では、「日本の教員を取り巻く現状と学校制度の成り立ち」について紹介しました。主に以下4点です。

① 日本では、教員が長時間の労働に従事している
② 労働時間のうち『課外活動(部活動)』の占める割合が他国よりも著しく長い
③ 「授業」以外の様々な「本務」の占める割合が、他国に比べて多い。
④ 上記①~③の背景として、日本の教育制度(「日本型学校教育」)が大きな影響を与えている

連載第3回目となる今回は、これまでの内容を踏まえて、「日本型学校教育」が持つ正と負の両面についてご紹介します。
前回までの記事を未読の方には、本記事をご覧いただく前に、これまでの本連載のご一読をお勧めいたします。

【前回までの記事】
教員の多忙さと部活動の関係について(1):日本の教員を取り巻く現状と学校制度の成り立ち①
教員の多忙さと部活動の関係について(2):日本の教員を取り巻く現状と学校制度の成り立ち②

3.「日本型学校教育」の光と影①(前編)

◆「日本型学校教育」制度は、慣習として維持される? 根幹からの変革こそ必要!

日本の学校制度は、政治力を増す他国からの脅威を発端とした歴史上の紆余曲折を経たのち、結果的には、「子ども達の生活を丸ごと抱え込む」性質をもつようになりました。

文部科学省の前身である旧文部省からの歴史を引き継ぎながら、その管轄のもと全国規模で普及してきた学校制度には、過去からの慣習が根強く残っています。
また、文科省が管轄する教育制度における慣習だけでなく、局所的には、その意向をもとに権限を委任されている教育委員会や各学校が築き上げてきた慣習があります。

そうした学校教育の中で育ってきた私たち国民にとっては、現在の「学校」のあり方は当たり前のものです。そうした意識が、土台からの変革を困難にしてもいます。
これは、行政だけの課題ではないのです。

管見の限りでは、慣習のあり方を大きく見直すことで、日本の教育は抜本的に改善されるはずです。
しかし、その実現が極めて困難であることもまた、紛れもない事実なのです。

仮に、学校制度自体を変革するアプローチをするとなれば、大がかりな一大変革となることが予見されます。
教育行政のリーダーシップはもとより、教育委員会や学校、国民一人ひとりの意識などが一体となって変革を合意し、リスクとベネフィットを検討し、総意の上で取り掛かる必要があるでしょう。

現在、行政が、すでに構築された学校制度を土台として、「枝葉」の部分を工夫して対応しようと尽力しています。しかしながら、このような対応は「焼け石に水」であり、限界を超えているように見えます。

◆学級を「生活集団」として維持するリスク(損失)とベネフィット(利益)

前回の記事では、日本の教育制度の成立過程において注目すべき3点を挙げました。
以下の表に、その3点を整理してみましょう。

日本の教育制度の成立過程において注目すべき3点

上の表からわかるように、学校制度が必要とされた約150年前から、現在の日本の状況は大きく変容しました。
「日本が先進国として認められる」「就学率の上昇」という2つの課題については解決済と言えますので、懸念の必要はありません。
重要なのは③の、「学級」という「生活の場」形式が、国民の生活スタイルの変化にそぐわなくなってきたという問題です。

以上の表に示したように、この3点を前提とした日本の学校制度は、およそ150年前の状況を前提として構築されたものであり、現在は大きく状況が異なっています。
事実、国民の大多数が農民でなくなった以上、学校を「生活集団」として維持する必要性(ベネフィット[利益])は乏しくなりました。
しかし、それにも関わらず、これまでの慣習に従って「生活集団」をベースとした「日本型学校教育」制度が維持されています。

以下に、日本の学校が抱える代表的な課題を3点、列挙します。

1.子どもが抱える問題
2.教員の長時間労働
3.学校・教育委員会・文部科学省が対応すべき内容の肥大化

これらの課題は、国民の生活スタイルや社会情勢の変化を踏まえて学校制度を根幹から変革させることで、大きく改善を試みることができるはずです。

たしかに、根幹から制度を変えようとすれば困難を伴います。
しかし、ここに着手しないままでは、学校が抱える課題解決へのアプローチは遅々として進みません。

実際に大幅な変革が行われれば、現行の学校制度がもつ長所が失われるというリスク(損失)が生じることも事実です。
しかし、管見の限りでは、国民および国は、このような一大変革を潜在的に望んでいるように思われます。
その「長所の喪失」と「課題の解決」と、私たちはどちらを重視したいのでしょうか?

私たちには、このような問いが投げかけられているのです。

次回の〔中編〕からは、以上に3点挙げた「日本の学校が抱える問題」について検討していきます。

〔中編〕に続く

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