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貧困などによって十分な教育を受けることができない家庭環境に置かれた⼦どもが⾼⽔準の教育を受けることができるようにするためには、どのようなアプローチが必要とされるのでしょうか?
そして、このような現実を前に、自治体や学校は、家庭環境と教育⽔準の問題に対してどのように向き合うべきなのか。

全2回のこの連載で、「家庭環境と教育」に関する既存研究を参照しながら、この問題を整理してみたいと思います。
そして、次回は「教育格差」を狭めるための自治体の取り組みについてご紹介いたします。

【アメリカの事例】

長年の研究によって、子どもの学力は家庭環境に依存することが明らかとなっています。

ノースカロライナ州大学のAnna J.Egalite准教授の研究では、両親の学歴が子どもの学力に影響を及ぼすことを示唆しています。(*1)

例えば、大学卒および大学院卒のいわゆる「高学歴」の両親は「勉強すること」に対して価値を感じているだけでなく、「教育の質」にも関心を払う傾向があります。また、「高学歴の親」は、学校の課外活動や保護者会に積極的に参加し、結果として彼らの子どもの学力が高くなりやすいのです。

(*1)Anna J.Egalite(2016/3/9) “How Family Background Influences StudentAchievement” (Web magazine『Education Next』掲載)

【日本の事例 — ベネッセ教育総合研究所の研究より】

次に、子どもの家庭環境の特徴に着目した日本の事例研究に目を向けてみます。

ベネッセ教育総合研究所が行った研究では、保護者を対象に家庭環境に関する調査を実施し、子どもの家庭環境が持つ特徴を細かく分析しています。(*2)

同研究所の結果によると、子どもが小さいことに絵本の読み聞かせをした家庭、学校外の教育支出(塾など)が高い家庭では、子どもの学力が高くなる傾向にあることを明らかにしました。

一般的に、所得水準が高い家庭の方が学校外の教育支出を容易に捻出することができるため、高所得の家庭で育つ子どもは、より学力が向上する傾向にあると言えます。

(*2)データ出典:ベネッセ教育総合研究所「教育格差の発生・解消に関する調査報告書[2007年~2008年]

【既存研究から見えてくる家庭環境(所得)と学力の関係】

このような研究を踏まえて⾒えてくるのは、「学歴の⾼低は所得格差に相関しており、かつ学力格差は所得格差に起因している」ということです。

これまでに確認したように、一般に「高学歴」とされる親がいる家庭は、所得⽔準が高い傾向にあります。
そして、⾼所得の家庭では子どもに良質な教育を受けさせることができる一方で、低所得の家庭では、子どもに⼗分な教育を受けさせることができないのです。

⼦どもは、⾃らが⾝を置く家庭環境を⾃分の意思で選ぶことができません。
また、現状の社会では、学力差は人生における選択可能性を狭めてしまうことがあります。
家庭環境(所得)と学⼒の相関が明らかになった以上、この「格差」をいかにして狭めることができるかということは、早急に検討する必要がある問題なのではないでしょうか。

次回は、家庭環境と教育に関わる問題に取り組むNPOや自治体の活動を紹介したいと思います。

〔2回目の記事を読む〕

田口 充樹(たぐち みつき)
神戸大学大学院国際協力研究科 修士2年
ミテモ株式会社 2030年職員室をデザインするプロジェクト学生インターン

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