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◆近年、教員は「副校長・教頭」になりたがらない

全国的に成り手が減少傾向にある「教頭・副校長」のポスト。

最近、2016年6月に行われた東京都の副校長の募集では定員に120名足りない、という報道がありました。(*1)

また大阪市においては、2001年度の教頭選考試験受験者数が小中学校合わせて574人だったのに対し、
2013年度にはわずか50人と、12年の内に受験者が10分の1以下に激減しました。
市はこのような事態の発生を受け、各学校に向け「1名以上を推薦して試験を受けさせる」という対策が取られました。

では、なぜこのように教頭・副校長の成り手が大幅に減少しているのでしょうか?

その最たる要因は、「教頭・副校長が忙しすぎる」という現状ではないかと分析しています。

(*1)NHKニュースウォッチ9 特集ダイジェスト(2016/7/27 放送)『副校長“120人不足” 教育の現場で何が?』
http://www9.nhk.or.jp/nw9/digest/2016/07/0727.html

(*2)≪関連記事≫朝日新聞(2016/1/12)『教頭昇任試験、校長推薦制で受験者1.7倍に 大阪市』
http://www.asahi.com/articles/ASJ156F8YJ15PTIL023.html

◆副校長・教頭はどんな仕事をしているのか?

どの学校にも必ず1人以上いる副校長・教頭。
具体的にどのような仕事をしているのか、その業務内容を分類してみました。

【副校長・教頭が日常的に携わる業務】

1.校長の補佐・相談役

2.教職員への支援・助言・指導

3.養護教諭・栄養教諭・管理作業員等、担任外の教職員への支援

4.特別支援補助員・図書館補助員等の支援と管理

5.学校行事等の推進とマネジメント

6.いじめ・不登校・虐待等の問題解決と関係機関との調整

7.問題を抱える保護者の相談役、及び窓口

8.地域(PTA・学校施設開放・ボランティア等)との窓口

9.学校広報(ホームページの更新や学校便りの発行承認等)

10.学校会計の監督

11.設備等の点検・修繕等を行う業者との窓口

12.教育委員会等へ報告する文書処理

13.教育実習生の受け入れ準備と世話

14.市や区単位で行われる研究大会等の準備と窓口

15.人事評価、及び学校評価

16.来客、及び電話応対

いかがでしょうか。
副校長・教頭が携わる日常業務は、非常に多岐にわたります。

また、副校長・教頭の業務内容の特徴を見てみると、

●長年の教員としての経験や専門性が求められる業務
……(「2.教職員への支援・助言・指導」など)

●年齢や人生経験が活きる業務
……(「7.問題を抱える保護者の相談役、及び窓口」など)

●事務処理能力が求められる業務
……(「12.教育委員会等へ報告する文書処理」など)

●誰でもでき、誰かがやらなければならないが、煩雑で誰もやりたがらない業務
……(「11.設備等の点検・修繕等を行う業者との窓口」など)

の4つが混在していることが分かります。

実際の具体例を挙げましょう。

たとえば、職員室のパソコンが故障したとします。
この際、教育委員会に購買申請を出し、修理業者が来る日程を調整し、
細かい連絡などを行う窓口役は、副校長・校長が務めることが多いのが現状です。

民間企業であれば、専務や部長などの重役がそのような仕事をすることはまずないでしょう。
このような仕事は総務部のような部署か、あるいは若手が担うのが一般的ではないでしょうか。

しかし学校では、若手教員もベテランと同じように担任や授業を持ち、校務を分担しています。
教頭・副校長がこのような仕事を若手にお願いすることも困難な業務構造なのです。

結果、インターホンを取るのも、最初に電話を取るのも教頭・副校長であり、
彼らが「雑務」にまみれてしまう状況が生じるのです。

そもそも「教員の業務量が多すぎる」ということも当然ながら問題です。
しかし、長い年月をかけて経験を積み、専門性を得た教員が、
結局は「専門性がなくともできる仕事」に忙殺されているという現状では、
このポストに魅力を感じる人が激減するのも頷けます。


◆今こそ、業務の分配の再検討を

副校長・教頭のポストを確保するため、昇格試験を半ば強制的に受けさせる施策を設けた大阪市の対応は、
全ての学校に教頭を置くためには致し方ない対応だったのかもしれません。

しかし、この問題を根底から解決に導くためには、
副校長・教頭の仕事をはじめとする学校全体の業務を一度すべて洗い出し、慣習などに囚われず、
「この業務は本当に必要なのか」
「必要だとすれば、誰がやるべきか」
「誰もやる人がいないのであれば、新たなポストを設けるのはどうか」
といった、抜本的な改善に向けた議論がなされなければなりません。

改善に向けた積極的な取り組みがなされなければ、この問題は以後も解決されないでしょう。

(杉山史哲=文)

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