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8月5日(金)都内某所にて、名古屋大学大学院の准教授の内田良先生と、学習院大学の教授で日本特別活動学会の会長も務めておられる長沼豊先生に、今教員に大きな負担を生み出していると指摘されている部活動問題を中心に、学校をめぐる問題の背景と構造について対談していただきました。
今回から3回に分けて、対談の内容ををご紹介します。

掲載日:2016年9月2日(聞き手=ミテモ飯田)

【教師が実名で立ち上がる難しさ】

内田 私の専門は社会学なので調査をすごく大事にするんですが、やはり学問って現場から少し離れたところにあるというか。その中で、先生たちの声がダイレクトにSNSに上がってくるのがとてもありがたくて。

長沼 内田先生はそれを上手に駆使していらっしゃると思います。発信の仕方もそうだし。それにまた呼応して先生方が声を上げているっていう図式がすごいですよね。ここ1、2年のムーブメントは間違いなくそこから起こってきていると思います。これ、今までだったら考えられないことですよ。

内田 長沼先生も、部活問題対策プロジェクト(*1)に名前を出されていますよね。

長沼 これからやっぱりもっともっと声を上げやすくなると思いますし、部活問題対策プロジェクトのメンバーも、今は匿名ですが、彼らが堂々と名前を出せるような社会を作らなきゃいけないなと思っていて。

内田 確かに身バレに関しては、先生方は物凄く敏感に反応しています。

長沼 それはやっぱりいろんな目線や、期待や、同調圧力等でがんじがらめになっちゃっている。私だったり内田先生だったり、違う立場の人が声を拾うっていうのは、大事だと思うんですね。
④

(*1 公立学校教員等6名有志の独立団体)

【学校で起きている問題の背景1 ―― 教員人口の年代別の波について】

―― 部活動問題も含め、学校で起きている様々な問題の背景には、どんな根本的な問題があるのでしょうか。

長沼 本当にいろいろな背景があるんですけども、一つに、教員の年齢構成がものすごく悪い。30代40代の中堅どころがものすごく少ないんですよね。そのしわ寄せが全部その世代に行っているんですよね。これから彼らはさらに大変で、彼らが全員管理職をやっても足りなくなる。だからこれはやっぱりなんとかしないといけないですよ。ちょうどこれからその世代が育休に入ったり産休に入ったり子育てで忙しくなるでしょう、それはやっぱり部活動にちょっと待ってくれって言いたくなる。人口が多ければ、なんとなく同じ世代で助け合える、でもそうじゃないから彼らは声をあげたんじゃないか、私はそう思っています。

―― 30代40代が少ないというのは、構造的なものなのでしょうか。

長沼 戦後にどかっと採用したでしょう、それでしばらくはあまりとらなくなって、そこが解消されたらまた採るという波になってしまっているんです。どこかで調整しないと、永久に繰り返され続ける。だから今は教育委員会は40代50代の先生をけっこう採っているんですよ。そうしないと、また人数が足りなくなっちゃうから。

【学校で起きている問題の背景2 ―― 「言えない」先生】

内田 長沼先生や私は、学校の問題について発言するときに、名前を出すことになんの抵抗もないわけですよね。でも一般の先生方は、そのことを凄まじく気にしています。ネット上で積極的に情報を発信している先生方でも、自分の学校では一言も自分の活動のことを発言していないわけですよ。部活動に限らず,これは職場のあり方として問題だと思います。

長沼 そうですね。すべての問題に言えることだと思います。特に公立の先生は大変です。公務員というしがらみもあるし、保護者からの要求や期待もあるし、管理職からの指示にも従わなければいけない。
部活動に関して「一生懸命やっている先生がいいよね」という風潮があるなかで、「私は拒否します」とはなかなか言えない。

内田 部活動に対して保護者からの圧力というのはどういう風にお考えですか。

長沼 これはもう、はっきりしていますね。一生懸命やってくれる先生が良い先生。朝から晩まで土日もやってくれる先生が良い先生。例えば「他の部の先生はこれだけやっているのに」とか、「他の学校、隣の学校の先生はあれだけ練習してくれる、だから先生お願いします。」とか。やっぱり「子ども」のためとか、「強くなるため」と言われちゃうと、断れなくなる。優しい先生ほど、わかりましたといっちゃう。
続きを読む→【内田良×長沼豊対談 】まだ部活動で消耗してるの?(2)

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